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2018年6月5日火曜日

2. サービスデザイン|ユーザー中心型デザインとは


前回、サービスデザインの基礎を説明したので、今回はサービスデザインの大きな特徴のひとつである、ユーザー中心型デザイン(User-centered Design)について紹介します。


ユーザー中心型デザインの大まかな話


今、あらゆる業界が「ユーザー中心」に変わってきています。ユーザーのニーズを中心にビジネスをデザインすることが、結果的に利益につながるとわかってきたからです。めっちゃ簡潔に言うと、そっちの方が売れるということです。

ユーザーを中心に置く理由は、つくる側(サービス提供者やデザイナー)にはユーザーの体験や感情がわからないから。そこで、実際にサービスの対象となるユーザーやステークホルダーを取り込み、彼らのニーズをビジネスに当てはめるデザイン思考アプローチが用いられるようになりました。


ユーザーとは誰か


「ユーザー中心」の意味するユーザーって、誰のことでしょうか?これは、大きく2つに分けられます。

①エンドユーザー
②サービス提供に関わるステークホルダー

私がやってきたヘルスケアのサービスデザインを例にすると、取り込んだユーザーはこんな感じ。

①エンドユーザー:患者さん
②サービス提供に関わるステークホルダー:サービス提供者(ヘルスケア企業スタッフ)、医師、看護師、医療研究者、患者代表団体、企業弁護士など

そしてこの②の「サービス提供者」も前回の記事で述べたように
・フロントエンドスタッフ(カスタマーセンターなど)
・バックエンドスタッフ(本社の社員、さまざまな部署から)
が含まれます。

比較的若く、そこそこ健康な私たちデザイナーには、ガンやHIVの患者さんの体験や悩みはがわかりません。また、エンドユーザーである患者さんの意見だけでは、包括的なデザインにはなりません。医療現場の現状には理由があり、患者さんはそういった事情を理解していないためです。そこで実際のサービス運用に関わる医師、看護師といったステークホルダーも取り込む必要がある訳です。

ユーザーをデザインプロセスに取り込む


ユーザーをプロセスに取り込む手法には、例えばこんなものがあります。 ・インタビュー(電話、対面など)
・ワークショップ(コ・クリエイション、バリデーションなど)
1対1で行うインタビューから、ワークショップではステークホルダーの一部または全員を1つのテーブルに集めることも。

どういった手法を使うか、どの関係者を呼ぶか、何人呼ぶかといったアプローチはプロジェクトごとの目的に合わせて変えます。例えば、1対1のインタビューではその人の体験をじっくり掘り下げて聞けるというメリットが。一方、グループでのワークショップでは他のメンバーの意見や話を聞いて「わかる、私もこういう経験が…」と話が広がったり互いのアイデアを積み重ねてよりよい案をつくりあげることができます。


ユーザー中心型デザインのメリット


サービスデザインの観点からユーザー中心型デザインのメリットはというと、全員にとってwin-winの関係をつくられることです。

サービスデザインのゴールは、複数ユーザーの体験を向上させることで、エンドユーザーにも企業にも、その他ステークホルダーにもメリットのある包括的なデザインにすることです。

ヘルスケアの例で言えば、いくら患者さんにとって理想的なアイデアであったとしても、医療現場の医師・看護師に大きな負荷がかかるものは、実現できません。そんなサービスをつくったとしても、医療従事者は使ってくれないからです。そのため、患者やその家族、医療従事者、サービス提供者といったステークホルダー全員の声を聞いた上で、win-winの関係をつくりあげていきます。

その結果、サービス提供側の企業にも(複数ユーザーの問題を解決できるため)商品・サービスが売れるメリットができる訳です。

また、サービスデザインでは企業のバックエンドの改革も同時に行うため、
・運営側のプロセスが改善されてコスト・時間の削減
・スタッフの満足度向上
といったメリットをもたらすことができます。


まとめ


まとめると、ユーザー中心型デザインは:
・エンドユーザーとその他関係者両方をプロセスに取り込む
・彼らの意見を聞くことによって問題点を洗い出し、解決策を作り上げる
・取り込み方はインタビューやワークショップなどを組み合わせてプロジェクトのニーズごとに決める
・全員にとってのwin-win関係をつくることで、企業にもメリットをもたらす
です。


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サービスデザインシリーズ:
1. 新しいデザインのあり方|サービスデザインって何?
問題解決ができないデザイナーはデザイナーじゃない

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