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MicrosoftのXboxチームが発表した、Xbox Adaptive Controllerがすごいので紹介。
Xbox Adaptive Controllerとは
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XACは、身体に障害のある人向けのコントローラー。
一見簡素に見えるデザインですが、側面には19個の接続ポートが。これは、標準コントローラーを使うのが難しいユーザーが、各々の身体ニーズに合わせたデバイスを追加できる仕様にしたため。
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例えば、指がうまく動かせない人はジョイスティックを。手指を動かせない人は、完全に足だけでゲームをプレイすることも可能。ジャックを差し外しするだけなのでセットアップにも時間がかからず、瞬時に他のデバイスに切り替えることも複数のデバイスを同時に使用することもできます。
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XACができた経緯
これまでにも、一般的なコントローラーが使えない身体障害者向けにはフットペダルやフィンガースイッチなどさまざまな特殊ギアが開発されてきました。でもこれらのギアは、ひとつ5万円以上と個人ではなかなか手が伸びにくい価格設定でした。Xboxチームは、病院やチャリティグループ、NPO団体が身体モビリティの限られたユーザーのゲームプレイをサポートする様子を調査した後2015年に、ユーザーや介護者のフラストレーションを減少させるバリアフリーなゲーム環境をデザインするためのハブを発足。1年後に、予算が降りてMicrosoft公式の市販用プロジェクトとして動き出したのです。チームは今年後半にも、XACを$99で発売予定。
ステークホルダーを交えたリサーチが生み出したデザイン
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このXAC開発のすごいのは、「一つのデバイスで全てのユーザーに対応することを潔く諦めた」ところ。Xbox Inclusive Tech Labチームがリサーチした人々の中には指が生まれつきない人や、片腕が麻痺している人、病院でリハビリを受けている人々も。デザインの過程でさまざまな障害を持ったゲームファンにインタビューとテストを繰り返し、どんな標準コントローラーを作っても、すべてのユーザーが満足するデザインにはならないという結論に到着。そこで、思い切ってミニマルなボタンと十字キーがついただけの、カスタマイズ前提コントローラーを作った訳です。
実際のユーザーとなる、身体モビリティが制限されたゲームファンたちをプロセスに取り込むこのプロジェクトは、User-centered Designのよい事例であり、デザインリサーチやユーザビリティ・テスティングの重要性が見えるプロジェクトでもあります。
最近、IBMやMicrosoftといったこれまではデザインとの結びつきが強くなかった企業がどんどんとデザインリサーチャーや文化人類学者を雇ってチームを作っています。ユーザーが直面している問題とは何かを紐解き、「ユーザーが本当に必要としているもの」を作るというトレンドがビジネスの世界でも広まってきているんですね。
インタビュー動画はこちら(英語です)
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