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2018年2月19日月曜日

輸血用Uber、Zipline|デザイン×ヘルスケアの交差点|世界のケーススタディ

出展:Zipline

最近、デザインとヘルスケアの交差点に注目しています。
デザイン思考やデザイン戦略がビジネスや行政に応用される中、デザインが世の中をよくするためにできることはまだまだたくさんあって。私は患者さんのユーザー体験をデザインするチームにしばらくいたので、特にヘルスケアへのデザイン応用が熱いなと思っています。

最近おもしろい!と思った事例が、「輸血用Uber(Uber for Blood)」と呼ばれる、Zipline


輸血用Uber、Ziplineとは?


Ziplineは、シリコンバレーのロボティクス企業がルワンダ政府と共同で運営するサービスで、ドローンを使って遠隔地域への輸血用血液や治療薬を配達するというもの。これまで運搬に平均4時間かかっていたところを、30分に短縮しました。

ルワンダでのZiplineの活躍をまとめると:
・それぞれ約50万人の人々のライフラインとなっている12の病院と提携
・去年5500ユニットの血液を運搬。そのほとんどが生死に関わる治療に使われた
・特に役立っているのは、出産時の母親の大量出血による死亡と、子どもに多いマラリアによる貧血症状の予防
・傷みが早い血液の病院でのストックを削減できるため、廃棄の減少にもつながった

ソース:'Uber for blood': how Rwandan delivery robots are saving lives


テクノロジー開発ではなく、プロセスデザイン

このプロジェクトの優れた点は、テクノロジーそのものではないんです。ドローン自体は前から存在するもので、Ziplineが開発したものではありませんからね。

注目すべき点は、東アフリカにおける遠隔地域のヘルスケア問題をどう解決するか?という問いに対して、既存のテクノロジーをうまく応用してそのプロセスを改善したこと、そして政府を巻き込んでその運用を可能にしたこと。

プロセス改善のデザインには、ワークフロー、ポリシー/法規制、政府や病院とのパートナーシップ開発、トレーニング、運用管理を含めたバックエンドの改革が必要です(参照:新しいデザインのあり方|サービスデザインって何?)。

周辺の建造物に対する規制が多い先進国では、商業的なドローンの利用はまだテスト段階。「ドローンを使って治療薬を運ぶ」というプロジェクトは先進国ならとっくに実行されていてもおかしくないのですが、アイデアはあっても、実施に持ち込むまでには時間がかかります。それを東アフリカの政府が(もしくはだからこそ)先立ってやった訳です。


プロジェクトの成り立ち


先の記事からプロジェクトの成り立ちを抜粋・意訳すると、
・2014年、タンザニアの Ifakara health instituteを訪れた際、医療事業者向けに現地大学院生がデザインした、治療薬やワクチンの要請システムと出会う
・このシステムを使って何千もの要請が行われていたが、政府からの対応が追いついておらず、実質的には「死のデータベース」と化していた
・この「政府側の対応速度」という問題を解決するために、Ziplineを発足
・ドローンで治療薬を運搬することで対応速度が劇的にアップ
・現在は、Whatsapp(メッセンジャーアプリ)かZiplineのサイトを使って治療薬の要請をすると、「今ドローンが向かっています」という確認メッセージが届くしくみになった

Whatsappを使って治療薬をオーダー(出展:Zipline

まとめ


まとめると
・Ziplineはプロダクトのデザインではなく、プロセスのデザインである
・既存のテクノロジーの利用と、バックエンドの改革で患者救済の成果を挙げた

今は従来的な意味での「デザイナー」という枠を超えてMBAや組織戦略でもデザイン思考が応用されているので、こういう事例はどんどん増えるでしょう。デザインには社会を変える力があるということが、もっと浸透していくといいなと思います。


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