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2020年6月14日日曜日

BLACK LIVES MATTER:日本人の私たちにできること

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George Floydさんの死を引き金に、アメリカ全土、また世界に広がったBlack Lives Matter運動。もっと学びたい人、自分も参加したいけどどうすればいいのかわからない人も多いと思います。

私は黒人人口が10%のカナダ、トロントに住んでおり、仕事の半分はアメリカ企業がクライアント、デザインスクール在籍時にはアメリカのデトロイト地方とシカゴ地方に提携パートナーを持ち地域問題に取り組んできたので、身近な問題です。

北米でも、「何かしなきゃ」という思いや差別への怒り、悲しみとともに、どうしたらいいのかわからず悔しい思いをしている人がたくさんいます。私自身、自分にできることをやっていても、この問題と、広くは人種差別問題を真剣に考えれば考えるほど、傷ついてきた人の声を聞けば聞くほど、フラストレーションが溜まっていきます。

400年続いてきた人種差別が2週間で終えられないのは当たり前です。でも、少しでも関心を持って何かしたいと思っている人のために私ができることのひとつとして、BLMへの参加方法を紹介していこうと記事を書きました。


参加のしかたは色々ある


はじめに言っておきたいことが、BLMへの参加方法はたくさんあるということです。Black Lives Matter運動と聞いておそらく頭に思い浮かべるのは、プロテストだと思います。プロテストは、参加人数が多ければ多いほどメディアに取り上げられやすく政治的な圧力にもなりやすい。英語では "add a body" と言うくらい、とりあえず数を増やすというのは有効な参加方法です。

一方、参加のしかたはプロテストだけではありません。コロナウィルスによる心配や、健康や家庭の事情で出られない人もいるでしょう。家にいながらでもできることはたくさんあるので、プロテストに出られないからと諦めないでください。

1. 制度的差別について学ぶ


一番大切なのは、学ぶこと。BLM運動が再発し、アメリカ中が怒っている中、日本語のツイッターを見ていて「あれ、違うな」と思ったのは、George Floydさん殺害を「ひとつの事件」として捉えている人が多そうなところでした。「ひとりの警官がひとりの黒人を殺して、こんなに騒ぎになっている」というような。中には、Floydさんの過去の犯罪歴を持ち出して警官による殺害を正当化するようなツイートまで出てきました。

もちろん、BLM運動はFloydさん事件についても怒っています。でも、この事件はあくまで引き金で、400年間続いてきた黒人に対する「構造的・制度的差別 (systemic racism)」に怒っているのです。この「制度的差別」とはどういうことかを理解しなければなりません。

日本の報道では一部、暴動や略奪だけにフォーカスを当てて取り上げられていたり、先日はNHKが差別を助長するような描写で「貧富の格差に怒った黒人が暴動を起こしている」と誤報道していました(NHKは多数の抗議を受け謝罪、削除)。

まずは、正しい背景となぜ今こういうことが起きているのかを学ぶことが大切です。黒人差別の歴史については、それこそ何千ものリソースがあります。ここで紹介するのは限られた範囲になりますが、まずは出発点として参考にしてみてください。

【アメリカの制度的差別について】

act.tvというチャネルによる、アメリカの(黒人に対する)制度的差別をわかりやすく噛み砕いて紹介している動画があったので日本語翻訳を手伝いました。


(右下の「CC」ボタンで字幕オン、日本語字幕にならない場合は設定ボタンから日本語を選択してください。)

【BLMとアメリカにおける黒人差別の歴史】

今回のBLM運動をアメリカの歴史とともに日本語で詳しく解説されたnote記事。まだの方は読んでみてください。

【アメリカにおける警察暴力】

制度的差別にはさまざまな側面がありますが、Floydさん事件は「警察」という私たちを守るべき社会制度側のメンバーが、手錠をかけられ無抵抗の市民の呼吸が止まるまで首を締め、殺害したものです。

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アメリカ全国で警察による射殺件数は年間およそ1000件、過去5年で5000件。武装していない市民が警察に射殺される確率では、黒人は白人の約4倍です(引用: Washington Post)。

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この社会契約に対する矛盾と、あらゆる方向から黒人の機会が奪われ、さらには、私たちと同じように普通に生きているだけで命が危険に晒されていることに抗議しているのがBLM運動です。

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Floydさんの事件について知っている人は多いと思いますが、アメリカでの警察暴力、特に黒人に対する暴力はもっと大きな社会問題です。この画像は、最初のBlack Lives Matter運動を引き起こした2014年Eric Garnerさんの殺害から今までに、警察によって殺された黒人のリスト。知られているものだけで、これだけ。公開されていない事件はもっと多くあるでしょう。

Floydさん最後の言葉となった "I can't breathe" は、2014年にEric Garnerさんが最後に口にした言葉と同じものでした。Garnerさんは路上でタバコを売っていた疑いをかけられ、「警察にハラスメントされるのはもううんざりだ」とその場を去ろうとしたところ複数の警官に抑えつけられ、その内のひとりに首を締められ死亡。彼はその間、11回もこの "I can't breathe" を繰り返していた。黒人は店で買い物をしたり(George Floyd)、路上を歩いていたり(Eric Garner)、自分の家で眠っていたり(Breonna Taylor)するだけで警察にたやすく殺されているのです。

こちらの、黒人の青年が「母親に教わった暗黙のルール」としてTiktokに上げた動画も話題になりました。日本語でも紹介されているので見てみてください。


【アメリカにおけるアジア系移民と黒人差別の関係】

以下は英語ですが、北米に住む日本人として、「アジア系移民が同じマイノリティながら黒人差別にどう加担してきたか」、「アジア系としてどうすればアライになれるか」といった内容の記事がとても勉強になったので共有します。特に、北米に住んでいる人には読んでほしいです。



また、黒人以外がラップミュージックなどで黒人アクセントやスラングを使用することも、ひとつの抑圧のかたちであると指摘した記事 "It’s Time for Asians to Drop Their ‘Blaccent’" は、今まで考えたこともなかったもので勉強になりました(アジア系カリビアンの著者が自戒をこめて書いた記事です)。ブラックカルチャーが好きで話し方などを真似ている人は、無意識の内に黒人差別を助長し搾取する側に立っているかも知れません。

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これらはほんの一部です。他にも、黒人団体の声明、黒人によるインタビュー、エッセイ、ポッドキャストなどを通して彼らの声に耳を傾けてください。

今回のBLM運動に関する情報が入ってきたことによって、疑問、質問がたくさん湧いてきた人もいると思います。これはめちゃくちゃいいことです。

今まで自分がしてきたこと、言ってきたことが実は差別的だったのではないか、無意識に他者を傷つけてきたのではないかと気づくのって、ものすごく居心地が悪いですよね。この居心地の悪さ、今まで知らなかった恥ずかしさ、「でも」と抵抗したくなる気持ち。黒人差別に限らず、女性差別、人種差別、LGBT差別など、あらゆる事柄に対して出てくるこの気持ちを認めて、乗り越えてアップデートしていくのが一番大切です。

 "I'm not racist" は差別主義者がしょっちゅう口にする言葉です。差別のほとんどは、おそらく、気づかない内にしてしまっているもの。「差別をしよう」「あいつらを傷つけてやろう」と思ってする人は少ないのです。そこで思考停止させて「自分は差別主義者じゃない」と抵抗する方が楽です(残念ながら北米でもそういう人はたくさんいます)が、ポジティブに捉えてみてください。今まで知らなかったという事実は変えられませんが、これから知り、耳を傾け、学び、成長することはできます。

2. イベントに参加する


次の方法は、イベントに参加すること。開催できればもっといいかもしれません。プロテストもその内のひとつですが、対談や学習会のようなものもあります。

私は今度、Where are the Black designers? という2名の黒人デザイナーが開催するバーチャルカンファレンスに出席します。AIGAというアメリカのデザイン協会によると、アメリカのデザイン業界の内黒人デザイナーはたったの3%しかいないそうです

プロになるための教育機会が少ないというのもあれば、制度的差別についての動画でも出てきたように、implicit bias(潜在バイアス)による選考問題もあるでしょう。私がデトロイトの地域問題を研究し住人に話を聞いていた時は、「周りに大学や大学院を出て高スキル職に就いているロールモデルがいない」という問題も出てきました。そういった議論を黒人デザイナーが発信してくれるのは、とても貴重な学びの場だと思います。

実はイベント発表後、主催者の予想をはるかに超えたRSVP(席の確保)がものすごい勢いで来て一時シャットダウンしたそうですが、最近また受付開始されました。(詳しい時間がまだ発表されていないのですが、アメリカ時間になるはずです。)

3. 寄付する


プロテストやボランティアなど時間や体を使った参加が難しい人にとって、寄付は手っ取り早くできる参加方法です。黒人をサポートする団体は数多くあります。少し余裕のある人は10ドル、20ドルでもいいので寄付を考えてみてください。

寄付先一覧

寄付先の種類はBail Fund(保釈金サポート)からメンタルヘルスのサポートまでさまざまです。迷った方は、なるべく資金の集まりにくいローカルのNPO団体を選ぶのがいいと思います。

私は、黒人の中でも特に黒人トランスジェンダー(特にトランス女性)が差別や暴力の対象になりやすいことから、黒人トランスジェンダーをサポートする団体に寄付しました。


4. Black owned businessを利用する


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黒人系経営のビジネスを利用するのも、サポート方法のひとつです。

制度的差別はさまざまな角度から被るものです。教育機会、就職機会、世代間の資産などが全体的に少ない黒人層にとっては、ビジネスを始めるための負担も他の人種よりも重くのしかかります。北米であればジャマイカ系のジャークチキンレストランや黒人デザイナーによるアパレルショップ、美容ショップなどのビジネスがあります。利用できそうな人は、こういったビジネスにお金を回すことでのサポートも検討してください。

トロントの黒人経営ビジネスリスト100

5. 情報をシェアする


差別は、社会全体がつねに歴史と社会問題を学び、価値観をアップデートしていかなければなくなりません。上記で紹介した動画や記事、差別問題について学んだことは、ぜひ周りの人にも広めてください。そして、周りで(黒人に関わらず)差別的な発言をしている人がいたら、注意してください。

英語がわかる人は、英語で得たニュースや情報をツイッターなどで拡散することもできます。また、BLMプロテストやイベントをSNSで拡散させるのもひとつの参加方法です。

6. 日本における差別について学ぶ、考える、話す


今回、BLMはアメリカで起こり、世界中に広がりました。イギリスでも黒人系移民とその子孫を中心に国民が立ち上がり、ベルギーでもコンゴで残虐な支配を行っていた昔の国王像が撤去される事態となりました。


これを機に、日本でも自分たちの抱える構造的・制度的差別に目を向けて議論が活発になればと思います。BLMがきっかけで関心を持った人も、そのエネルギーをぜひ日本国内の問題にも、自分自身の特権や周りへの振る舞いへの気づきにも向けてみてください。

例えば、日本でも昔からある
・アイヌ民族、琉球民族
・在日朝鮮人差別
・被差別部落、同和問題
といった人種や出身による差別が今でも続いています。

他にも、
・外国人差別(最近では技能実習生、クルド人男性への警察暴力)
・Black face/黒塗り問題

・女性差別(最近では医大入試女子減点問題)
・ジェンダー、セクシャリティ差別(最近では第三者によるセクシャリティアウティングが自殺に至った一橋の事件
なども制度的差別です。

さらに、「日本が戦時中に犯した加害・侵略行為」について。これは日本人全員が学ぶべきことですが、(私のフォロワーは海外留学・移住を考えている人が多いので)海外に出たい人には特に学習必須事項です。

慰安婦問題、満州、韓国・台湾などの統治といった話は、どこかのタイミングで必ず出てきます。その時に、なんと言える日本人でありたいか?歴史を否定するか、無知を露呈するか、守りに入るか、原爆など自分たちの被害だけを語るか、認めた上で平和的な未来についての努力を語るか。自分ならどう反応するか考えてみてください。どういう選択を取れるかは、それまでにどれだけ学んで考えてきたかで決まります。

トップ画像:Obi Onyeador撮影

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