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2017年11月7日火曜日

デザイン思考:チームでのアイデア出しを倍速にする「Yes-anding」ルール


今、北米のビジネスやデザイン分野では「多分野の(Interdisciplinary)」チーム編成が進んでいます。これは、色んなバックグラウンドの人間が集まったチームの方が、多角的な視点で問題を解決してより効果的なプロジェクトを作れるから。

そんなチームメンバーそれぞれの視点を生かしてよりよいアイデア出しを進めるには、批評はせずにアイデアを積み重ねていくことをチームで徹底しましょう。それが、チームでのアイデア出しを倍速にするデザイン思考ツール「Yes-anding」です。


肯定+付け足し=アイデアの拡散

Yes-andingはもともと、Improvという即興コメディカルチャーから派生したもの。
やり方はシンプルで、「No, but(いや、でも)」は使わず、「Yes, and(そうだね、それに)」と他のメンバーが出したアイデアを肯定してさらにアイデアを積み上げていきます。

例えば、AさんとBさんのペアでImprovをするとします。即興コメディのため、お題を与えられたらそこから2人で手探りで状況を作り上げなければなりません。

A「あ、こんなところにボートがあるよ」
B「何言ってんの?ここは家だよ」

これでは話が進みません。
「Yes, and...」を使うと、こんな感じになります。

A「あ、こんなところにボートがあるよ」
B「本当だ、漕いでみようか」 
A「うん!……あれ?なんだか思ったより進みが遅いね」
B「うん。パドルを使ってくれるとありがたいんだけど、僕の手だけで漕いでるからね」

というように、相手の出した設定を受け入れ、そこに付け加えていくことで話を進め、最終的にオチをつけることで一緒にジョークを作りあげていきます。

批評は量的なアイデア出しを妨げる

これはビジネスでも同じで、アイデア出しで大事なのは、とにかく量を出すことです。ここは拡散的思考(Divergent Thinking)をする段階で、実際のインフラや規制、時間・予算と照らし合わせて絞っていくことは後の収束的思考(Convergent Thinking)の段階まで置いておきます。

でも、経験が豊富であるほど自由な発想を先制してしまいがちに。経験豊富なメンバーが「いや、それは現実的に見て無理」などと言ってしまうと、話が進みませんし、他のアイデアが出にくくなります。Yes-andingを心がけることで、みんなのアイデアを出しやすい環境がつくられる訳です。

なぜ「みんな」のアイデアが大事か

チーム全体の意見を取り入れる必要性には、2つ理解しておきたいポイントがあります。

①シニアメンバーがいいアイデアを持っているとは限らない
経験が増えるにつれてスキルは高まりますが、その分現実的な規制やルールが先に見えて自由な発想をしにくくなる側面も。案外、「業界の現実」をまだ知らない若手の方が、おもしろいアイデアを出せたりします。経験豊富なメンバーと、枠に囚われない若手メンバーとがアイデアを重ね合った方が、より強力なものをつくられます。

②多角的な専門分野を持ったチームメンバーそれぞれの視点を生かす
せっかく色んな分野の人間を集めたのに、それぞれの意見が交わらなければ意味がありません。Yes-andingを心がけることで例えば、営業が「こうできたらおもしろいよね」と言ったアイデアにデザイナーが問題解決の切り口をつけたし、エンジニアが工学的な裏付けを元にアイデアを掘り下げる、といったコラボレーションが可能になる訳です。

まとめ&あとは練習あるのみ

まとめると、No, butを控えて「Yes, and」と言うことで
・誰もがアイデアを出しやすい空気を作られる
・経験値の高い人、低い人両方のいいとこどりができる
・さまざまな専門分野のメンバーのそれぞれの視点を生かせる

ただし、言うのは簡単ですが身につけるのは時間がかかるもの。私も今の会社に入ってからずいぶんと練習をして慣れました。

私の仕事では、一般のユーザーやクライアント企業社員を交えた「コ・クリエイション」と呼ばれるワークショップでもこれをよく使います。

コ・クリエイションの参加者のほとんどは、デザイン思考初心者。最初にルール説明として共有しても、やっぱり普段のクセで「いやいやそんな…」と言ってしまうメンバーが必ず出ます。結構これ、無自覚でやっちゃうんですよね。そんな時は、練習していけばOK。他のメンバーが否定的な発言をした時は、「あ、今No butって言った〜!」なんてNGを出して、前向きに方向修正していきましょう。

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