「バズを起こして・・・」「バイラルに広めて・・・」
企画会議でこういう会話を耳にした人も多いはず。
バイラルとは、マーケティングや広告業界で使われる言葉で、「ウィルスのようにどんどんと勝手に広がっていく(拡散されていく)現象」のこと。そりゃあ、ユーザが勝手に商品の話題を広めてくれれば嬉しいんだけど、じゃあバイラルになる要素ってなんだろう?
オーストラリアはメルボルンの広告代理店、McCann MelbourneでクリエイティブディレクターをするJohn Mescallさんは、こう言う。
「バイラルになる要素は5つある。暴力、セックス、すごさ、おもしろおかしさ、キュートさだ。」
実は彼がディレクションしたオーストラリアの鉄道「Metro Trains」の広告は、2012年11月にリリースされると同時に、バイラルに驚異的な速度で拡散された。そしてその業績が認められ、なんと今年のカンヌで史上初の5冠を達成!!
Dumb Ways to Die
そのMetro Trainsの動画というのが、「Dumb Ways to Die」。日本語で言うと「ダサすぎる死に方」。クライアントであるメトロトレインズからのオーダーは、「鉄道を取り巻く危険に対する注意を喚起すること」。それに対してMescallさんたちが出したソリューションが、愛らしくて暴力的な歌+アニメの動画を作ってネットに上げることだった。
そうしてできた動画がこちら。
心地のいいメロディーと優しい歌声に乗せて、かわいいフォルムのモンスターたち全員が「ダサい死に方」で死んでいくという内容だ。これが、内容はまあまあグロいのにおもしろおかしくて何度も見てしまう。
例えば、自分で電気工事をして死ぬ、ネットで肝臓を2つとも売って死ぬ、狩りのシーズンにムース(ヘラジカ)の格好をしていて撃たれ死ぬ、自分の局部を餌にピラニアを釣って死ぬ・・・
そんなまぬけな方法で死んでいくキャラクターたちが次々と登場し、最後にはメトロトレインズのメッセージである「鉄道を取り巻く3つの危険」を冒して死んでしまうキャラが描かれている。
なんとこの歌、iTunesで公開された後24時間でオーストラリアでトップ10入り、その後すぐアジアの様々な国でトップ10入りを果たした。そしてニュージーランド人のアニメーターによってアニメ化された動画は、Youtubeにアップされるなり10日間で2800万回再生された。(現在は5300万回)
なぜここまでバイラルに広がったのか?
ひとつは、拡散してもらいやすい素材を準備したことだ。Mescallさんたちは、Tumblr用にはGIFアニメ、歌はiTunes、そして動画はYoutubeと、ユーザーたちが「拡散しやすい」状況を入念に用意していた。誰かに伝えたい、と思っても、シェアボタンがなかったり自分でアップロードしなければならないとなるとそこで脱落してしまうユーザーは多いだろう。
そして、内容のおもしろさ。
「暗くて憂鬱な問題と、甘すぎるぐらいのキュートさの合体こそが、この広告をおもしろくした最大の要因だと思う。まさにこれは、広告のように感じさせない広告なんだ。合理的に説明するのは難しいけれど、ただ「変」なだけじゃない、とても馬鹿げていて楽しくて、クレバーなものなんだ。」(John Mescall)
バイラルになる5つの要素の内、多くの企業が嫌がるであろう「暴力」と「セックス」を排除した後、単体でものすごいアイデアが降ってこなかった場合の、残った「おもしろおかしさ」と「キュートさ」を合わせたのが、Mescallさんのアプローチという訳だ。
ソース:
How to go viral http://www.webdesignerdepot.com/2012/11/how-to-go-viral/
McCANN
http://www.mccann.com.au/
※ちなみにこの「ダサい死に方」を日本語で書くと、以下のとおり。
一通り斜め読みしてビデオを見れば、あとはアニメなので内容はわかるはず。
・自分の髪の毛に火をつける
・グリズリーベアを棒でつっつく
・消費期限の切れた薬を飲む
・自分の局部を餌にピラニアを釣る
・トースターにフォークをさす(感電)
・自分で電気工事をする
・独学で飛行する
・2週間常温で保存していたパイを食べる
・サイコキラーを家に招き入れる
・ドラッグディーラーのおニューの車にひっかき傷をつける
・宇宙空間でヘルメットをはずす
・乾燥機でかくれんぼする
・ガラガラヘビをペットにする
・ネットで肝臓を2つとも売る
・超強力接着剤を飲み込む
・起爆装置のスイッチを「何かしら?」と押す
・狩りのシーズンにムースの格好で出かける
・意味もなく蜂の巣で遊ぶ
・駅のホームギリギリに立つ
・踏切を無視して渡る
・プラットフォームの向こう側に渡る