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2016年3月25日金曜日

一流ブランドの裏側に密着したドキュメンタリー『Crazy About Tiffany's』


トロントはGood Fridayで、今日から3連休。うちの職場はひょんなことから4連休に。
ってことで近所の映画館で『Crazy About Tiffany's』がやっていたので早速見に行ってきた。

どんな映画かというとジュエリーブランド、ティファニーの歴史やデザイナー、スタイリストを特集したドキュメンタリーで、それはまさにこう言える内容でした。

ティファニー万歳三唱映画


映画のトーンは基本的に、イエーイ、ティファニー!。まあタイトルからしてそうだしね。

ブランドに関わる人物へのインタビュー、裏舞台への密着で構成されていて、切り口は
・チャールズ・ティファニーの類稀なるブランディング
・ポップカルチャーにティファニーブランドを浸透させた映画、「ティファニーに朝食を」
・インハウスの職人がハンドメイドで仕上げる一流ジュエリー
・トップデザイナー、スタイリスト、モデルたちの描く華やかな世界
・ティファニーがいかに「レジェンド」を作り上げ、シンボルになってきたか
というところ。

中でも大々的に取り上げられている、モデル・Jessica Bielがオスカーのレッドカーペットを歩く際に身につけるべくジュエリーのデザイン・選定は見もの。



「婚約指輪」という概念をこの世に登場させたのもティファニーだ。「ブルーボックス」は今やエンゲージメントリングのシンボルと化し、女子はあの青い箱を渡される日を夢見ている…



そんな軽やかなロビンエッグの「ティファニーブルー」はブランド最大の象徴で、Pantone社に特注でティファニー用のPMSを用意させたほど(PMS 1837の番号はティファニーの創設された年にちなんで。一般入手不可能)。



といった具合に、ファッション脳・物欲脳も刺激のみならず、個人的にはモノづくり脳がバンバン刺激される美しい世界の連続だった。

だけどダウンサイドや社会面、笑えるシーンも


そんなティファニー万歳なストーリーだけど、この映画を10ドルそこらで見てる一般人に全てすとんとくる内容ではない。しかしそこはドキュメンタリー映画なだけあって、ダウンサイドにもちゃんとスポットライトを当ててくれた。

・ティファニーが喜ばせてるのって結局白人でしょ
映画の初盤、ティファニーブルーの象徴の件にはカニエウェストのショーの一幕が出てくる。「I'm talking about those rich White people with blue box」とカニエが言って観客が笑うシーンだ。そう、この映画に出てくるトップデザイナーやモデル、スタイリストの9割が白人で、値段を聞くのも怖いようなイスに座りながら優雅に話しているのだ。

こないだオスカーにノミネートされた俳優陣が全員白人というのが問題になったけれど、アメリカでは社会流動性がまだまだ低く、ティファニーのような「一流ブランド」は結局作る側も買う側も金持ち白人。華やかな世界を追いかければ追いかけるほど、むしろ金持ち白人しか買えないんじゃん、という事実が明らかにになる。見習いデザイナーには黒人やアジア人もいてこれから変わる可能性はあるけど、今のところ裏側で指揮を取ってブランドを作り上げているのもそれを受け取っているのも賞賛しているのも白人なんだ、というのが色濃く出ていた。

・アメリカンドリームの裏側
「プロポーズにあの青い箱を」というティファニーアイコンがポップカルチャーに浸透すればするほど、社会に与える影響は大きくなる。恋人にプロポーズしたくても、ティファニーを買える人ばかりではないのだ。

映画中には、そんなところに目をつけてセカンドハンドを販売し出した47th Aveの中古ジュエリー店が出てくるし、「彼とティファニーに一緒に行くなんて、私ならちょっと嫌だわ。だってその後なんだかんだ行って15ブロック先のあの店に行くかも知れないじゃない!」という女子の声は笑える。

さらに舞台は、中国にも。今バブル期絶頂を迎えている中国では、ティファニーのようなステータスの象徴となる高級ブランドに富裕層が押しかけていて、消費行動がこれまでの『必要なもの』から『欲しいもの』へとシフトしている様を紹介する。



・今の時代感に合わなくなってきている
個人的に少し共感できておもしろいなと思ったのが、ミレニアル(今の若い世代)はティファニーのような高級品に前の世代のように価値を見出していない、という点。彼女たちにはネックレスや指輪一つにそれだけの値段を払う理由がわからないのだ。インタビューに登場する女子大生の「ティファニーって正直1950年代って感じね。「愛」を本来のもの以上のところまで引き延ばしてしまっていて価値観が古いわ」という言葉には妙に納得させられる。

ティファニーの作り出すジュエリーは今でも美しいけれど、私たちやそれより若い世代にとって、プロポーズでティファニーの指輪を渡され、笑顔で彼に飛びついてクルクル回るSweet Home Alabama(邦題:メラニーは行く!)のような価値観はかなり薄れているように思う。

ティファニーの店頭でプロポーズするSweet Home Alabamaのワンシーン

他にも、
・『ティファニーに朝食を』の原作小説では主人公のHolly(オードリーヘップバーン)は売春婦で、映画でも実はよく見ると暗示されていること
・小説を映画化するにあたってティファニーを舞台にさせてくれと交渉があったこと
・ティファニー側はこれを受ける代わりにオードリーを広告に使うことができ、見事ポップカルチャーへの浸透を果たしたこと
・絶妙なデザインで人目を惹くウィンドウディスプレイデザイナーのGene Mooreインタビュー
・ティファニーという一流ブランドの存在が後世(スティーブジョブズ)をインスパイアしたこと
などなどおもしろいシーンがいっぱい。紹介しきれないのでトレイラー置いときます。トロントはBloor Hot Docsシネマで明日まで公開。



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