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2018年11月20日火曜日

デザインリサーチで求められるEmpathy(共感)はテクニックではなくマインドセットである



人間中心デザインで必須となるのが、Empathy(共感)。前回、インタビューを受けた際にこの話をしたところ、「それって気遣いということですか?」と聞かれたんですね。ああ、たしかにそういう風に聞こえるかも、と思ったのでちょっと掘り下げます。



デザインにおけるEmpathyには気遣いも含まれますが、もっと根本的なマインドセットの話です。インタビュー記事中では、こう話しました。

例えば、自分の立場が相手とどう違うのか、自分が相手をどう見ているのか、そして相手にどう見られているのかを意識・理解した上で、相手の言葉に耳を傾け、ユーザー目線で物事を正しく理解するのが「Empathy(共感)」です。


これをもう少し掘り下げると、

1. 自分の立場が相手とどう違うか、相手にどう見られているか


弊社のデザイナーは全員学部卒以上、修士号持ちが一番多く、中には博士号持ちもいる、ミドルクラス〜アッパーミドルクラスの人間です。

例えば我々が、低収入コミュニティ、レフュジー、ホームレスといった人々の話を聞くとしたら?もしくは、健康体の我々が重病と闘っている患者さんの話を聞くとしたら?

大抵の方は「あんたにはわからない」と感じるでしょうし、中には蚊帳の外からおもしろがっていると感じる人もいるかも知れません。

そういった自分たちの立場の違いをあらかじめ洗い出す。リサーチ内容によって、相手との共通点がある場合は共有したり、ない場合はそれを認める。そして、なぜその問題が大事なのか、なぜ解決したいのかを共有した上で「教えてください」という姿勢でリサーチを実施するのがEmpathyの第一歩です。

2. 自分が相手をどう見ているか


人間、誰しも育った環境や所属するコミュニティによって、偏った考え方をしている部分があるものです。デザインリサーチに繰り出す前に、まずはユーザーグループに抱いているかも知れない自分の偏見を自分自身に問うてみる。そして、自分の中の答えを持ち出さずに相手の言うことに耳を傾けて、ユーザー目線でものごとを理解するように務める必要があります。

逆に、Empathyがない状態というのはどういうことか?

例えば、メンタルヘルス分野のリサーチをするとしましょう。
極端な話、比較的に健康的な人生を送ってきたリサーチャーが「精神の病は甘えだ、やる気がない」という偏見を持っているとか、「メンタルヘルス問題を抱えている人は自殺願望がある」と決めつけているような状態です。

ヘルスケアの中でも、メンタルヘルスは特に誤解や偏見がはびこる分野。私は実際にメンタルヘルス関連のプロジェクトを行なった際、まずその分野で活動しているNPO団体に話を聞きに行き、理解を深めるところから始めました。そして、そこでの学びをあらかじめ参加者に共有し、自分たちのプロジェクトにおける「メンタルヘルス」の定義や、プロジェクトのゴールを共有しました。

また、ワークショップ中に過去のトラウマを思い出して辛くなる人がいるかも知れないと考え、別部屋にセラピストを用意し、参加者にも説明しました。

まとめ


まとめると、
・人間中心デザインではEmpathy(共感)を用いたユーザー理解が必要である
・Empathyはテクニックだけでなく、根本的なマインドセットである
・自分と相手の立場の違い、見られ方を意識する
・自分の偏見を意識した上で、ユーザーの話に耳を傾ける

参考になったら押してください。

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