ご近所のここトロントでも不安な声はよく聞くが、アメリカではもっとだろう。中でもニューヨークは多文化共生のリベラル中心社会。トランプ当選のショックは大きかったようだ。私が訪れた11月下旬は、選挙直後のようなデモは見かけなかった。でも街中には人々の、アーティストたちの、たしかな心の揺れと叫びがあった。
ユニオン・スクエア駅:何百ものパワフルなメッセージ
いくつもの路線が通り、毎日たくさんの人が行き交うユニオン・スクエア駅。構内の壁にはカラフルなポストイットが所狭しと貼られている。Matthew ‘Levee’ Chavezというアーティストが始めた「Post-it Therapy」だ。選挙後の重い気持ちや不安感を一人で抱えずに共有しようというこの動きは共感を呼び、瞬く間に広まった。短く書かれた言葉たちはリアルでパワフルだ。彼らの生活を思うと、こっちまで感情が揺さぶられる。
・不安や悲しみを訴える人々、抗議する人
「トランプは私の大統領なんかじゃない」
「黒人の、美しく、賢い息子をアメリカで育てるのが毎日不安で仕方がない」
「私という人間は肌の色で決まる訳じゃない」
・愛を訴える人々、ポジティブな動き
「常に愛が勝つ」「愛さえあれば大丈夫」
2週間が経っていたからなのか、愛を訴えるメッセージはかなり多かった。
「(とある白人から他の白人へ。)
話すのをやめて、ちゃんと聞くんだ」
ハイライン:アーティストたちの作品
一方、ハイラインでは選挙前から、アーティストたちの作品を展示するプロジェクトが行なわれている。Barbara Kruger: Untitled
これは、アフロ・カリビアン系哲学者、Frantz Fanonの言葉を引用した作品。Fanonの「Blind Idealism is reactionary/盲目的な理想主義は、反動によるものだ」というフレーズは「政治的・宗教的な信条は各々の育った環境から派生するものであり、各個人固有の性質ではない」というメッセージだ。Krugerはこれにバツ印をつけ、「盲目的名理想主義は、
Zoe Leonard: I want a president
Leonardが「I want a president」を書いたのは24年も前、ジョージ・ブッシュが大統領に選ばれた1992年だ。彼女自身は「今の私だったらこうは書かないだろうけど」と言っているが、あらゆるメディアで取り上げられているように「今こそこの作品がふさわしい時代だ」と思う。
*1 High Line Artより引用・意訳
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